▼炎症とは  ▼免疫とは  ▼炎症のメディエーター  ▼急性炎症と慢性炎症

 

急性炎症と慢性炎症

Ⅰ. 炎症と免疫

 

炎症とは

炎症は損傷や感染など有害刺激に対する免疫応答です。可溶性炎症性メディエーター(サイトカイン、ケモカイン、血管作用性物質)と免疫細胞(骨髄系、リンパ球系、樹状細胞系)の相互作用を伴います1-4)

炎症は、有害な刺激(病原体やその他の有害物質、損傷した組織や異常な細胞など)を取り除き、組織修復を促進します1)
免疫応答では、サイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8、TNF-αなど)、ケモカイン(CCL2など)、血管作用性物質(ヒスタミン、ブラジキニン、プロスタグランジンなど)などの可溶性炎症性メディエーターが放出されます2-4)
   これらは、毛細血管の透過性を高めて周辺組織に水分を流出させたり(腫脹)、免疫細胞の遊走因子として作用します2)
免疫応答に関与する免疫細胞には多くの種類があり、いずれも造血幹細胞由来です5)
   骨髄系細胞には、肥満細胞、好塩基球、好中球、好酸球、単球(マクロファージ前駆体)があります。
   リンパ球系細胞には、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、B細胞があります。
   樹状細胞(DC)には様々なサブセットがあり、それぞれ異なる造血系から生じます6)

 

 

免疫とは

免疫応答は、免疫細胞や上皮細胞などの細胞上にあるパターン認識受容体(PRRs:Toll様受容体やNOD様受容体など)によって様々な抗原が認識されることにより活性化されます7)。免疫は大きく自然免疫と適応免疫の二つに分けられます8)。自然免疫は防御機構の第一線で、迅速で非抗原特異的です。自然免疫は適応免疫(獲得免疫)を引き起こし、適応免疫には特異的な抗原認識とメモリー細胞の産生が含まれます8)

1. 自然免疫
自然免疫は、有害な刺激に対する迅速な応答であり(数分から数時間以内に発生)、抗原特異的ではありません8)
主に自然免疫に関与する免疫細胞は、好中球、マクロファージ、肥満細胞、NK細胞などです8)
   好中球:血中白血球のなかで最も多く、食作用により病原体を細胞内で死滅させ、抗菌ペプチドおよびプロテアーゼの顆粒を放出し、好中球細胞外トラップを形成します9)
   マクロファージ:組織に存在する食作用のある白血球で、単球由来であり、サイトカインやケモカインを分泌して他の免疫細胞を動員し活性化します10)
   肥満細胞:不均一な集団の白血球であり、多くの生理学的および炎症過程(アレルギー、血管新生など)に関与し、刺激(IgEや抗原など)によって活性化され、様々な可溶性の炎症性メディエーターを放出します11,12)
   NK細胞:パーフォリンとグランザイムを放出し、プライミングや事前の活性化なしにウイルス感染細胞などの異常細胞を破壊し、サイトカインも分泌します13)

2. 適応免疫
適応免疫では、T細胞およびB細胞が、表面受容体により抗原(病原体や異常な内因性タンパク質)を特異的に認識し、活性化します8)。適応免疫には細胞性免疫と液性免疫があります。
   細胞性免疫では、活性化CD8+細胞傷害性T細胞が、IFN-γやTNF-αなどの炎症性サイトカインやパーフォリン/グランザイムを分泌し、MHC I分子上に抗原を提示する細胞(ウイルス感染細胞などの異常細胞など)を直接破壊します14)
   液性免疫では、活性化B細胞から分化した形質細胞が抗体を分泌し、細胞外微生物などを排除します15)
  エフェクターCD4+ヘルパーT細胞は、認識された抗原をMHC II分子上に提示する抗原提示細胞(APC)によって活性化され、細胞傷害性T細胞およびB細胞の応答を増幅します15)
   一部の活性化T細胞およびB細胞はメモリー細胞に分化し、再感染時に迅速に応答します15)
   制御性T細胞とB細胞(TregとBreg)は、免疫応答が不要になったときに、正常細胞の損傷を回避するため免疫を抑制します15-17)
自然免疫と適応免疫に働く細胞や分子の多くは重複しています18)
   DCは、T細胞のAPCとして自然免疫と適応免疫を橋渡しし、生体防御の維持に重要な役割を果たしています8,19-23)

 

 

炎症のメディエーター

自然免疫および獲得免疫にかかわる様々な細胞種は、サイトカインを産生します4)図1)。

免疫細胞はサイトカインとケモカインを分泌し、これらは細胞間のコミュニケーションを仲介し、免疫系をさらに活性化します15)
免疫応答の主な調節因子であるサイトカインは多面的機能を有する小さなタンパク質で、分子メッセンジャーとして機能し、細胞間コミュニケーションを可能にします4,10,24,25)
   炎症性サイトカイン:IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-8、IL-12、IL-22、IL-23、IL-17、IL-18、IFN-γ、TNF-α
   抗炎症性サイトカイン:IL-10、TGF-β
   炎症性、抗炎症性のいずれかとして作用するサイトカイン:IL-6

 

 

急性炎症と慢性炎症

1. 急性炎症とは
急性炎症では、Toll様受容体(TLR)リガンド、ダメージ関連分子パターン(DAMP)あるいは病原体関連分子パターン(PAMP)を介する強力なシグナルによって骨髄細胞が活性化され、有害な刺激(病原体など)が取り除かれます2,7,26)
急性炎症の回復期には、好中球のアポトーシス、食細胞による死細胞の除去、組織の修復、免疫応答の抑制、自然免疫から獲得免疫への橋渡しが行われます2,26,27)図2)。
   抗炎症性脂質メディエーター(レゾルビンなど)やサイトカイン(IL-10、TGF-βなど)により、組織の修復や再生が開始されます2,26,27)
   同時にTregおよびBregが産生され、これらの細胞により免疫応答が抑制されます17,26,28,29)
この回復期は獲得免疫の過刺激によるダメージの防止に必須ですが、回復がうまく働かなかった場合には慢性炎症に至ります3,26)

2. 慢性炎症とは
急性炎症が解消しない場合、サイトカインや増殖因子が長期にわたって産生され、慢性炎症を引き起こします。慢性炎症は、骨髄細胞の活性化と免疫抑制をもたらし、がんを含む多くの病態の原因になりうると考えられています2,3,30)図3)。
がん、慢性感染症、敗血症、妊娠などでみられる慢性炎症では、通常、サイトカインや増殖因子を介した弱いシグナルが長期的に伝達されます。
これにより、骨髄細胞が異常に活性化され(骨髄由来免疫抑制細胞[MDSC])、その結果、免疫抑制が亢進します3,30)

3. 良い炎症と悪い炎症
腫瘍免疫サイクルという観点から、炎症は二重の役割を担っています。生体防御の側面から考えると炎症は有益ですが、同時に、炎症は免疫を抑制して腫瘍の増殖や進行を促進するという悪い面も知られています(図4)。
急性期は「良い」炎症であり、IL-2やIL-15を介してT細胞やNK細胞が活性化され、免疫応答が亢進して、がん細胞の排除を助けます31,32)
しかし、炎症が改善せず長引いた場合、慢性化し「悪い」炎症となります。
IL-1βやTGF-βなどの炎症性サイトカインの放出が続くと、Treg、MDSCなどの細胞の産生や分化をもたらし、腫瘍の増殖や進行が促進されます33,34)

 

References
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